人生100年時代:75歳まで稼ぐために50代会社員が今やっておくべきこと
目次
50代会社員を取り巻く環境
「50代会社員」という言葉でググってみてください。
目につくのはネガティブな記事ばかりです。
上から順番に
“あなたは「逃げ切れる」か?50代会社員の憂鬱な現実”、
“職場で総スカンになる50代社員の特徴”、
“50代会社員が直面する役職定年のリアル”、
“「50代社員は無駄」と若手にそう思わせる会社の罪”
などなどです。
今、会社員で一番厳しいのは間違いなく
40代後半から50代の人たちです。
バブルの時代の入社で人数も多く、
給料も高いので、企業のリストラの
ターゲットになっています。
最近では45歳以上をターゲットに
3大メガバンクが32,000人、東芝が7,000人、
NECが3,000人、三越伊勢丹が1,200人削減しました。
富士通は5,000人の配置転換を行い、
2,850人が退職しました。
住宅ローンや、子どもの教育費、親の介護、
自分の健康問題など、お金も一番かかるときです。
転職をするにしても、上限は45歳と言われています。
大企業にいて、運良く中小企業への転職に成功される方が
いらっしゃいますが、大企業と中小企業では文化が
全然違っていて、職場に溶け込めずに辞めてしまう
人が多いのです。
では、今、50代の会社員はこれからの未来をつくるために、
どういうことをやっておくべきなのかを考えていきましょう。
人から求められる人材になる
ビジネスでなにが一番大切かというと、
人間関係、つながり、人脈と言っても
過言ではないでしょう。
そのためには“人から一目置かれる能力”と
“人を惹きつける人間的魅力”
を身につけることが重要になってきます。
その2つを磨くことによって、
「あなたと仕事がしたい」、「あなたでなければ困る」、
と相手に思わせるのです。
それが“あなたのブランド力”なのです。
ブランド力は“市場価値”を表します。
市場価値が高ければ高いほどビジネスでは
優位に立つことができます。
ブランド力をつけるためすることは2つあります。
まず自分の“提供価値”を明確にすること、
そしてよい人間関係をつくる
“総合的人間力”をつけることです。
これからそのことについて考えていきましょう。
自分の提供価値を明確にする
私は企業研修で年間200~300名の部課長に目標を
設定させるコーチングを行っていますが、
そこでつくづく思うのは、会社員は自分で目標を
設定しその目標をやり抜くことを実に苦手
としているということです。
自ら目標をつくりだすということは、主体的な行動であり、
会社はそのような自ら動く主体性を求めているのですが、
会社員には与えられた目標を達成することだけが
自分の役割であり、責任だと勘違いしている人が多いのです。
これは目標管理制度の弊害でもあるかもしれません。
連絡・報告・相談という項目では大多数の
管理職が結果をだせています。
報・連・相を大切にしているのは、
言われた事を言われたようにやるという
意識が強いからだと思います。
問題はそれが自分の役割期待だと勘違いして
しまっていることです。
ある意味、指示・命令に従わなければならないという
企業文化の負の側面がでているのかもしれません。
仕事というのは、「他者から求められる付加価値を提供すること」です。
会社員も、価値を創造し、提供していくことを求められるのです。
ですから、どういう提供価値を与えられるかで
その人の存在価値が決まります。
そして大事なことは、提供価値を明確にする際には、
提供される側からの視点で自分を客観的に見る
必要があるということです。
しかし殆どの会社員は提供される側、
すなわちお客様・上司・同僚・部下の眼鏡を通して
「自分がどのような価値を彼らに提供しているのか」
を省みてはいないのが現実なのです。
提供される側から見た自分の提供価値を明確に
できなければ、職場にいる存在価値は
曖昧なものになるしかありません。
そんなふうに存在価値が曖昧でありながら、
給料だけは高いとなれば、
若手から“50代社員は無駄”と言われてしまうのも
無理からぬところです。
なぜ会社員は提供価値を考えないのでしょうか?
社会の要請・ニーズと切れている会社員
世の中のビジネスは、“社会の要請・ニーズ”と
それを満たす“製品・サービス”の
掛け合わせで成り立っています。
顧客視点に立ち、“顧客の問題は何か”、
“ありたい姿は何か”を明確にして、
始めて顧客の真のニーズがわかります。
そのニーズを満たす“製品・サービス”を自
社の“強み・得意技”を活かして提供すること、
それが他社には供給できない、
独自の付加価値の提供なのです。
ところが、こうした顧客とのインターフェイスは
会社が持っており、ほとんどの会社員には
“社会の要請・ニーズ”と直接のインターフェイスが
ないのが実情です。
そのために大概の会社員にとって“顧客ニーズ”の
分析は未知の領域であり、いざやろうとしても
大変難しいということになってしまいます。
顧客の側から見たニーズの分析が重要
であるといいましたが、このことは
独立・起業を考える際にはさらに
決定的な重要性をもってきます。
ビジネスを創出するためには、顧客目線で
ニーズを見つけることと、そのニーズを
解消できる自分独自の“強み・得意技”
を見つけ出すことが不可欠だからです。
“お客様のニーズ”を正確に把握することは
非常に難しいです。
私も企業研修で独立したいと思って
起業したのですが、今の時代に求められる
研修ニーズがわからずに本当に苦労しました。
人脈をつくって、企業研修のお手伝いする
現場体験を経て漸く見えてきたのです。
社内で提供価値を明確にして存在価値を高める
40代・50代になったら、自分の提供価値を再考し、
存在価値を再定義しなければなりません。
会社が顧客に約束する価値を捉え直し、
自分の役割期待と結びつけるのです。
所属組織、職域の観点からキャリア・ドメインを捉え、
自分を活かせる最適なポジションを
獲得するための戦略を模索する必要があるのです。
価値提案という考え方
提供価値を考えることで大切になるのが、“価値提案”という考え方です。
「誰に」、「どのような価値を」、「どのような方法で」
提供するのかです。
箇条書きにすると以下になります。
自分達は
- 誰に(WHO)、
- どのような価値を(WHAT)、
- どのような技術・方法を用いて(HOW)
提供するのか?
という考え方です。世の中のビジネスのほとんどが
この公式に乗っ取って行われています。
ちなみに、下記の例を挙げますが、これは
どこの会社でしょうか?
- 誰に ⇒ 買い物に行く時間がない人、買い物に行くのが不便な人
- どのような価値を ⇒ 幅広い品揃えで、家に居ながらにして迅速に品物が届く
- どのような方法で ⇒ 検索しやすいHPと独自のロジスティックス、
高度なウェブマーケティング技術を駆使して
おわかりだと思いますが、上記の価値提案は
ネット通販最大手「アマゾン」です。
プロフェッショナルの仕事はすべて、
この価値提案という公式に当てはまります。
企業内の会社員でもこの公式で自分の
提供価値を考える必要があります。
独立・起業する際は、この価値提案という
公式でビジネスを組み立てることが
不可欠であります。
ターゲットによって提供する価値も方法も
変わってくるので、「お客様」、「会社」、
「上司」、「部下」、「他部署」など
自分の利害関係者を上げて下記の視点で
考えてみてください。
- あなたはこれまで、誰に、どのような価値を提供してきたのか?
- 誰に、どのように役立っているのか?
- 誰に、どのようなメリットを感じてもらえているのか?喜ばれているか?
このように価値提案という考え方を応用して、
自分の提供価値を明確にしていきますが、
極力相手の目線で考えることが大切です。
それが“顧客ニーズ”を把握することと同じだからです。
人間力を磨く
もう1つとても大切なことをお話します。
じつは存在価値を高めるためには提供価値が
優れているだけでは十分でありません。
それだけでは「いてくれてありがたい」、
「いてくれないと困る」、「代わりがいない」
と周りから思われる存在価値には結びつきません。
提供価値は車でいうと“性能”です。
どれだけの馬力があって、どれだけスピードが出るか、
燃費はどのくらいか、何人乗れるか、などです。
ところが、人間は感情の動物ですから、いくら性能がいいと
言っても、デザインの悪い車に乗りたいと思いません。
またハンドリングや乗り心地なども大切にします。
それと同じように、提供価値を存在価値に結びつける
ためには、価値観、哲学、人柄という人間的魅力が求められるのです。
人間的に好かれないと一緒に仕事をしたいと思われないのです。
そのための第一歩はポジティブになることです。
ポジティビティの重要性
人も動物も植物もポジティブなエネルギーに惹かれ、
ネガティブなエネルギーから遠ざかろうとします。
ひまわりは太陽というポジティブなエネルギーを
追いかけます。
動物も安全な場所に巣をつくるし、天敵のいる場所には近づきません。
いつも明るく、楽しく、前向きな(ATM)人間に人は集まってきます。
暗くて、文句ばかり言って、怒ってばかりいるような
ネガティブな人間に人は近寄ってきません。
この20年でポジティブ心理学という学問が
発達してきました。
この心理学は普通の人が幸せになる事を研究しています。
幸せになると、好奇心に溢れ、創造力も活発になり、行動量も増えます。
幸せで、ポジティブになると最高の成果がだせるのです。
最高の成果をだすための心理学と言えるでしょう。
幸せになるための沢山の方法がポジティブ心理学により
発見されていて、持続する幸福感を得るためには
「感謝をする」、「人に親切にする」、
「人と比較しない」、「瞑想をする」などが研究で
明らかにされています。
これらの方法については、また別のところでお伝えします。
要するに、人から好かれるためには、ポジティブに
なることが必要なのです。
明るく、楽しく、前向き(ATM)になるとポジティブな
エネルギーが発散され、人があなたのもとに寄ってくるのです。
しかしながら、50代会社員の実態は周囲から浮いている人が
一番多い世代と言われています。
どうしたら周囲に溶け込むことができるのかを
知りましょう。
職場にとけ込む方法
50代になって職場で浮いている人の特徴は、
自分の価値を自慢したり、認めさせたりすること
ばかりやっているのです。
そういう人たちが大きく勘違いしているのは、
自分の価値が認められないと仲間に入れてもらえない
と思い込んでいることです。
そういう強い信念を持っているのです。
「価値を認めさせる」というのは、実は
「自分の弱さ」を隠しているのです。
本当は逆に、「弱さをさらけ出す勇気」が大切なのです。
これはあくまでも「弱さをさらけ出せる勇気を持ちましょう」
ということで、「弱さをさらけ出しなさい」ということでは
ありませんので誤解のないようにお願いします。
仕事をする上で自己開示が必要なときに、
周囲に受け入れてもらうために、
それができる勇気を持とう、ということなのです。
言葉で言うと簡単ですが、50代になって
これを実践することは面子があって難しいです。
50代になると“流動性能力”が落ち、
新しいことがなかなか覚えられなくなります。
例えば、50代のIT企業のエンジニアが若い30代の社員に
指導を仰がなければならないといったことが実際に
現場で起きています。
そういうときに素直に「自分の弱さをさらけ出す
勇気を発揮できるか」が人間関係を構築できるかの
鍵になるのです。
「なんども同じ事を言わせないでください」なんて言われ、
「面子を潰された」と感じて、次には確認せずに
自分勝手に仕事を進めた結果、失敗して
自信を喪失している50代が実に多いのです。
恥を受け入れ、ダメなところを認めて、それでも
「自分はこれでよい」という自己肯定感を
育成することが大切になります。
そのためには「自分への思いやり」を高める
必要があります。
例えば、
「自分は誠実で、たった一人のかけがえのない人間なのだ」
と自分に言い聞かせるのです。
自己肯定感を高める方法として“セルフ・コンパッション”
という手法が開発されていますが、これについても別の
ところでお伝えします。
人は他人から“ありのままの姿”をさらけだされると意外と
共感して受け入れるものなのです。
自分にもそういう弱さがあることを知っていて、
“弱さ”を隠して自慢話をする人間よりも、
“弱さ”を自己開示できる素直な人間に共感するのです。
「人からどう思われるか」ではなく
「自分はこれでよい」に変わることです。
そうすることで、弱さをさらけ出す勇気ができて、
周囲にとけ込むことができるようになります。
そして人間関係をつくるときに、一番大切なのは
コミュニケーションになります。
コミュニケーションが上手い方が周りから好かれます。
50代の方はコミュニケーション・スキルが平均して高いと思います。
歳を取っても伸びる能力に“結晶性能力”がありますが、
これは過去に取得した豊富な知識や経験をもとにした
説明能力が中心になるので、この能力を活かすことが
重要なのです。
50代はこの能力は高い方が多いのですが、
残念なことにそのベースとなるコミュニケーションの
スタイルに問題がある人も多いのです。
自分の心が何を感じて、何を伝えたいのか、
相手の心が何を感じて、何を伝えたいのかを考えないで、
自分が言いたいことだけを伝えようとする
50代が多いということです。
回りから信頼され、仕事を一緒にしていく上で必要な
コミュニケーション・スタイルを学ぶ必要があります。
アサーティブ・コミュニケーション
コミュニケーションは3つのスタイルに分けられます。
1つ目が“非主張的スタイル”で、自分を抑え、
自分の意見や気持ちを言わない、言えない、
相手のいいなりになる、です。
こういう人は学校などでは多いですが、
職場は意見を伝える力がないと
勤まりませんので、さすがに50代に
こういう人は少ないとは思いますが、
中にはこういうスタイルの人もいます。
2つ目が“攻撃的スタイル”で、自分の考えや気持ちを
伝えるのですが、「言い放ち」「押しつけ」
によって一方的に自分の言い分を通そうとする
スタイルです。
私の元上司の営業部長がこういうタイプの
典型でした。
ナンバーワンを目指していた昭和のボスに
こういうタイプが多かったですね。
今の50代でも役職経験者はこういうスタイル
のコミュニケーションをとっている人が
いるかもしれません。
自分のコミュニケーションのスタイル
を注意深く観察しましょう。
3つ目が、“アサーティブなスタイル”です。
アサーティブな自己表現とは、まずは自分の考えや
気持ちを明確に捉え、それを正直に、相手にわかりやすく
伝えてみようとすることです。
そして相手の感情を受けとめ言葉にすることです。
そしてお互いの感情を理解し、相手との関係を調整する
コミュニケーション・スタイルです。
アサーティブ・コミュニケーションとは
「自分の心」と「相手の心」を
大切にするコミュニケーションの仕方です。
アサーションで感情表現が重視される理由は、
感情は全ての表現に何らかの関わりがあり、
その扱いと表現がものごとの進展や解決、さらには
人間関係や心の問題に大きく関わっているからです。
コミュニケーションが上手な人も、このアサーティブの
考え方を知ればさらに人間関係を深めることが
できるようになります。
人生100年時代、75歳まで稼げる自分になるために
今からすぐにとりかかっていただきたいことを
ここまで述べてきました。
大切なことは人から求められる人材になることです。
そのために、提供価値を明確にすることと、
具体的な人間力の磨き方についてお伝えしてきました。
やるべきことはわかっても、どのように
やっていけばよいのかまだ分からないと思います。
引き続き、具体的な方法や考え方をお伝えしていきます。